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吉田純子・堤美由紀・石井ヒト美・池上和子

2002年に発覚した福岡久留米看護師連続保険金殺人の犯人グループ。
四人は看護師で、医学知識を悪用して保険金殺人を企てた。
1998年に池上の夫を、その翌年には石井の夫を殺害し、保険金を詐取した。
主犯は吉田で、他三人は彼女の言うなりで犯行に荷担した。
2004年の一審で吉田に死刑判決、堤に無期懲役、石井に懲役17年の判決。
池上は判決前に拘置所で病死。子宮ガンだった。
三人は控訴したが棄却され、堤、石井の刑は確定。
2010年、最高裁で吉田の死刑が確定した。



<概要>
四人は同じ看護師学校の同窓生で、学生時代からの顔見知りだった。
吉田純子は福岡の貧しい家庭の生まれで金銭欲が強く、十代の頃から周囲の人間を言葉巧みに操り、金を巻き上げていた。
堤美由紀・石井ヒト美・池上和子はそんな彼女の詐欺のターゲットとなり金を搾り取られた挙げ句、共犯として犯罪に荷担させられるようになった。
彼女らは事件後に吉田と同じマンションにそれぞれ部屋を購入しており、召使いのように扱われていたという。

三人の中で吉田と一番深い関係にあったのは堤で、レズビアン関係にあったという。
吉田と堤は同じ病院に勤務していたが、二人が急接近したきっかけは、堤が男性関係のトラブルを吉田に相談したことだった。
吉田は架空の「先生」をでっち上げ、彼にトラブル解決を依頼するという名目で堤から金を詐取した。
そしてその後も自分の後ろにいる「先生」をことあるごとにちらつかせ、堤を従属させていった。
堤を従属させた吉田は、肉体関係まで迫るようになった。

なお、他二人に対しても、吉田は堤の時とほぼ同じような手口で近づいている。
吉田は夫婦関係に悩んでいた二人に対し、偽のトラブルをでっち上げ、その解決を「先生」に依頼するという形で金を巻き上げ、更に恩を売ることで取り巻きとして以降の犯罪に荷担させた。

吉田は他の三人や同僚から多額の金を詐取していたが、贅沢な生活と借金返済のためになお多額の金を必要としていた。
1998年1月23日、四人は最初の殺人を実行する。
被害者は池上の夫だった。
吉田は池上に、夫が妻子の殺害を計画していると思い込ませた。
池上はそれ以前にも夫の女性関係のトラブルを吉田に「解決」してもらっていたため、夫が自らと子供達を殺そうとしていると思い込んでしまった。
四人は当初、被害者の食事に睡眠薬とカリウム製剤を盛って殺そうと考えた。
しかし、被害者の体調に変化は現れなかった。
カリウム製剤を注射し、殺害する計画を立てた。
計画は1月21日に実行された。しかし、この時は途中で被害者が目を覚ますなどして失敗する。
1月23日、四人は再度計画を実行する。
妻の盛った睡眠薬と酒により眠っていた被害者に、四人はカリウム製剤と空気を注入した。
被害者は死亡し、保険金3450万円が支払われた。そのほとんどは吉田の手に渡った。
池上は子供達を養護施設に預け、吉田の下で暮らすこととなった。

第二の事件は1999年3月27日に起きた。
被害者は石井の夫だった。
吉田は石井に夫が金銭トラブルを抱えていると吹き込み、保険金で解決するしかないと思い込ませた。
手口は第一の事件と類似しているが、今回はカリウム製剤は使っていない。
被害者は妻に盛られた睡眠薬と酒で眠らされ、チューブを使って胃に直接酒を流し込まれた。
急性アルコール中毒による死亡を狙ったものだったが、被害者はなかなか死に至らず、業を煮やした吉田は空気注射を指示した。
容態の急変した被害者は救急車で運ばれ、病院で息を引き取った。
保険金3300万円や被害者の退職金は、やはりほとんどが吉田の手に渡った。

事件の発覚のきっかけは、2001年8月、石井が警察に吉田からの脅迫を相談したことだった。
彼女はその前年にも堤の母親殺害の実行犯をやらされており(この事件は未遂に終わっている)、多額の金を要求された挙げ句、子供達を手放すよう言われ、精神的に限界に来ていた。
彼女は当初、夫殺害について伏せていたが、この一件をきっかけに警察は吉田らの周辺を捜査し始めた。
そして2002年4月17日、吉田と堤は同僚への詐欺で、池上は石井への脅迫により逮捕された。
また石井も夫殺害の容疑で逮捕された。
その後、捜査の中で一連の事件が明らかになった。
吉田に死刑判決、堤に無期懲役、石井に懲役17年の判決が下りた。池上は判決前に子宮ガンにて病死した。

2016年3月25日、吉田純子の死刑が執行された。享年56。
戦後5人目の女性死刑囚への死刑執行であった。

<ノンフィクション>

黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人 森功 新潮文庫

吉田を中心に、四人の出会いから逮捕までを描いたノンフィクション。
逮捕されてからも食事係の女性を手なずけてこっそり手紙を渡そうとするなど、彼女のメンタルの強さやしたたかさは並じゃない。
もっとも、人並みの人物がこのような事件を起こすはずもないのだが。
読んでいて思ったが、他三人を従わせる吉田は2002年頃に起きた北九州一家監禁事件の松永太埼玉愛犬家連続殺人事件の関根元を思わせる。
なお、この本で妙に印象に残っているのは吉田と堤のレズビアン関係の箇所。
堤が書いた書簡を元にしたという二人のレズビアン描写はいささか気持ち悪かった。

<テレビドラマ>
ドラマスペシャル 黒い看護婦
2015年2月13日、フジテレビ系列で放映されたテレビドラマ。
上述のノンフィクションが原作だが、登場人物の名前や設定はアレンジされていた。
吉田純子を演じるのは大竹しのぶで、堤は寺島しのぶ、池上は木村多江、石井は坂井真紀。
(キャストだけ見て木村多江が堤役だと思い込んでいた。どうしてだろう?)
大竹しのぶはさすがの演技。結構面白いドラマだった。

<類似の事件>
埼玉本庄保険金殺人事件(八木茂/武まゆみ/アナリエ・サトウ・カワムラ/森田考子)
愛人達と結婚した男性3人に保険金をかけ、自殺や事故に見せかけて殺害。保険金を搾取した。

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